ライ麦狼の寝床

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「同じ空のしたで」  □ 3 □

DATE: 2006. 05. 17 CATEGORY: 小説

02/05/24(金)21:17
 
(from朽葉):よっ!!、久し振りじゃん宮代~
 
 テレほタイムより早い時間。
 微分積分の復習が早めに終ったので、R.O.にログインした。途端、こんな耳打ちをされた。
 /kooko/はログインしていないらしく。
 まったく別のキャラクター。朽葉っていったい誰だ?
 

(to朽葉)宮代真駒:誰?
(from朽葉):うわっ、いたいた、いやがった
(from朽葉):氷川だよ。試しにこのサーバーで打ってみたん
 
 ああ、いかにも氷川らしい。
 奴は大学、僕は予備校が始まって以来、会う事も電話も無かった。もちろんROでの遭遇も無かった。
 久し振りの再会。アリ地獄ダンジョンの入り口で待ち合わせして、チャットルームを開いて会話した。
 奴は女性アカウントを取りやがって、女シーフを使っていた。何でも、クノイチ風のアサシンを目指しているそうだ。
 
朽葉:どうよ最近
宮代真駒:ダメかな
朽葉:そっかー
朽葉:そういや、白岡がバイト始めたらしいんだ、しかも住み込み
宮代真駒:バイト?白岡がか
朽葉:そうそう、浪人のクセにバイトしんだよ白岡も芳美も
 
 僕もその浪人だというのに、気を使わないで、もしくはあえて気を使わないふうになのか、氷川はいろいろと語っていく。
 白岡と狭山の二人のうち、白岡とは直接会っていないが、携帯電話のメールでマメにやり取りしているそうだ。
 話によると白岡は、この街のとある屋敷で住み込みのバイトをしているらしい。そこへ氷川は、無断で忍び込む気とのこと。
 
朽葉:前に一度やったんだが失敗してな。
朽葉:腕っ節のいいメイドさんに捕まってな、ヤバかった、ヤバかった
朽葉:お前もやるか?
宮代真駒:はぁ
 
 この手のバカな行動は、氷川のよくやる企画。
 僕自身も、好きでよく共犯になっていた。だが、つい出てしまった返答は、生返事もいいとこだ。どうも気乗りしないのだ。
 本当、目の前に氷川がいる様な感覚になる、良くも悪くも。
 
朽葉:はぁ、ってお前、調子悪いのか?。
   こういう企画は飛び付いたのに。
   女子寮潜入じゃ先陣を切った猛者だろうが
宮代真駒:・・・参ってるかな。今日は飛びつかないよ
朽葉:そうか残念。お前誘う気だったんだがな
朽葉:宮代は携帯持ってないから、
   前に留守覚悟で家にかけたら、お姉さんしかいなくて
宮代真駒:悪い、今度また。そん時は飛び付かせてもらうさ
朽葉:どちらかと言うと、携帯持ってくれ。企画は量産するから
宮代真駒:はいよ
 
 相変わらずのノリの氷川。
 どうも対応しきれず僕は逃げるように退出する。それを追うに、奴もチャットルームを閉じ、
 
朽葉:宮代、
 
 全体へ向けての、オープンな投げかけ。
 灰色の発言が、奴のPCの上に浮かぶ。
 その後しばらくの間が置かれる。奴が何を打ち込めば良いのか迷っている。迷いに満ちた無言だ。やはり感じるネット上の現実感。
 僕は、『なぁ宮代、俺が大学受かってお前が浪人して。何て言うか、その事で参ってんのか』とでも聞いてくると、無意識に予想してしまった。けれど奴が放った台詞は、
 
朽葉:気晴らしにさぁ、エロゲーでもやれや。
   お互い風俗いける身分じゃねぇしよ
宮代真駒:ああそうする
 
 下手な演技で、氷川は台詞をすり替えた。
 ネット越しでもそれくらい判る
 ・・・気を使いやがって、あいつらしくも無い。
 
 
 
02/05/25(土)00:34
 
 その夜、二通のメールに気付いた。
 一昨日の深夜と昨日の午後に、一通づつ入っている。
 このアドレスは/kooko/のだが、
 

 
<KK>
初めまして真駒さん。
こんな”手紙”を書くなんて、自分でも驚いています。
なんとも言えない気持ちです。興奮してドキドキして、何を書いていいかわかりませんが、これはラブレターです。

貴方のことは、ずっと前から好きでした。
帰りの電車がよくいっしょになって、…いえ違いますね。
最初うちは偶然に電車がいっしょだったのですが、この頃は、貴方がいつも乗ってくる電車と車両を選んで待ち構えています。
降りる駅は同じなので、東口の本屋さんまで、こっそり後をつけています。これじゃストーカーですね私。

情けないことに、声をかける勇気がありません。
いつも眺めるだけなんです。実は、お名前を知ったのもつい最近。お節介好きの友達が調べてくれたんです。あっ彼女には感謝しています、だって真駒さんの名前が解ったんですから。
貴方はいつも、熱心に本を読まれていますね。楽しそうだったり、つまらなそうだったり、色んな顔をして読んでいます。でも時々見せる真剣に読んでいる時の顔に、ドキっとしちゃいます。

いつも読まれているのは、何の本なんですか。
やっぱり受験生だから参考書ですか? それとも、貴方がいつも利用する東口の本屋と同じく、パソコン関係ですか? 実は私も、貴方に近づきたくて最近パソコンのゲームを始めてみました。

このあいだも本屋さんで、パソコン関係のコーナーで、雑誌のチェックをされていましたね。
そこで見てしまったんです。貴方が、あのモデルみたいな背の高い、すらっとした綺麗な女性と挨拶を交わし、楽しそうに話しながら店から出て行くのを。

奪われたくないと思いました。勝手な思い込みだって解っています。後をつけて、こっそり眺めて、こんな”手紙”を書いて、本当にストーカーみたいだって解っています。
でも、胸が締め付けられて、切なくて、泣きたくて、貴方にしがみ付きたいくらいに。好きなんです。

でも私はできませんでした。
だからこうして”手紙”を書いています。勇気もないのに。
でも御返事が欲しいです、どんなことでもいいです。こんなストーカーみたいな娘は願い下げだ、だってかまいません。




 
<KK>
昨日すいませんでした。
あんな一方的な、本当に一方的な”手紙”を書くなんて。
気持ち悪いというか、ドロドロに痛々しいと自分でも思います。
この気分が、自己嫌悪というやつなのだなと思い知りました。
あれは捨ててください。


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