ライ麦狼の寝床

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Ragnarok Online SideStory「ペットイーター」 中編

DATE: 2006. 07. 02 CATEGORY: 小説
「「「「さあ、我ら異端審問官が代行者として、
    この鉄槌をもって神々の御前に送り出そう」」」」

 異端審問官。
 代行者とも呼ばれる教団屈指の尖兵。
 それは、「人と神と魔族の大戦」 が遠い歴史上の出来事ではなく、生き証人は他界してもまだ人々の口伝に登り、
 街や村々に戦痕が残る時代から、世界の半ば以上を覆う闇を滅ぼし続けてきた集団。
 プロンテラ教団でも特別な位置に存在し、いくつものセクションに分かれて神の名の元に活動しているという。
 特に、『絶対数である7課』 と『存在しない事になっている13課』 には、バケモノぞろいという噂だ。
 噂といえば、なんでも1課が戦争でもする様な重武装で出撃したと聞く。
 枢機卿イノケンティウスに率いられ、遠方での異端者殲滅戦に従事している、というのが街の噂だ。
 そんな尖兵たちの中でも、通常プロンテラ市内で活動するのは3課と8課。
 共に本来ならば、教団内部で不正や不信心な行いをした者、教義に叛いた者を裁く監査役だ。
 なのに何故この場に。サララとガルデンをペットイーターと誤認して、裁きに来たのか?
 違う、二人とも明らかにウィザードとクルセーダーの格好をしている。じゃあ何故。
 解せない図式と胡散臭い依頼。もう何がなんだか解らない。
 けれどサララ動いた。理解不能と叫ぶ思考を切り捨て、戦えと訴える本能に従い魔力を走らせる。
 それは焼けたエーテル粒子が、血管と神経を疾走する様な感覚。
 ドロップスカードを4枚挿したロッドの助力も得て、一秒にも満たない詠唱で魔力が収束。
 そして発輝しつつ拡散。

『-Icewall-』

 サララから魔力が放たれた次の瞬間には、拡散した魔力が再収束の過程で空気中の水分に位相干渉。
 気体から固体へ相転位させ、二メートル超過の氷壁を快音と共に現出させる。
 続けざまの詠唱と、更なる先行入力。

『-Firewall-』
『-Firewall-』

 詠唱が短く速射性能の高いアイスウォール。
 その防壁の向こう側に二枚のファイヤーウォール。
 それらを角度をつけて展開させことで、敵との間合いを確実に確保できた。

「死にたくなくばそこを退け、手加減無用で撃たせてもらうぞっ」

 サララは先ほどよりも高密度の演算詠唱を開始。
 まずは魔力を走らせた右腕を、ゆっくり虚空に伸ばす。
 同時に、魔力で内側から焼かれる右腕で“何か” を掴むように意識する。
 たとえロッドを握っていても、意識を“向こう側” と称される11次元領域へ飛ばし、
 視えない指と腕をいっぱいに広げる。
 そこから先は指探り。
 視えない指で、“何か” を探り当てようとする。
 いくつもの“別の物” が通りすぎるが、懸命に“何か” だけを求める
 集中した意識が感触のみで“何か” を探し、……掴んだっ!!。
 途端、圧倒的な情報量がこの3次元領域まで堕ちてくる。

「くぅぁっ、ああぁぁ!!」

 右腕だけで耐え切れない。サララは咄嗟に左腕も使って“何か” を掴み直す。
 放すものかっ!!
 次の瞬間、暴風を従え旋回する光の魔方陣が展開。
 過剰な情報を帯びた魔力は、収束と拡散を同時進行し、光渦が空に立ち昇る。
 詠唱は長く連射も利かないが、対人戦闘における殲滅力はトップクラス。

その魔法の名前は、―― ストームガイスト ――。

 11次元領域越しに、ゆっくりと加速していくストームガイスト。
 演算詠唱は常に世界そのものに干渉しながら、別の領域から“何か”を引き降ろして行う術式。
 仮に幾人もの術者が同時使用したならば、世界の保有する情報処理能力を軽く超過し、発動不可に陥る恐れすらある。
 ゆえにその威力は絶大で、たとえ魔導に造詣が無い者でも、この世界の生き物として本能から恐怖を抱いてしまう。
 当然、異端審問官も応戦する。
 サララの大魔法を発動させまいと、氷壁と火壁の向こうから、彼らの信奉する神聖魔法を唱え、放つ。

『-Holylight-』
『-Holylight-』
『-Holylight-』

 神の御力たる質量を持った光を練り上げ、次々に目標に撃ち込まれるホーリーライト。
 明らかにサララの詠唱の阻害する事が目的だ。
 どんなに高度な魔法も、詠唱中にダメージを受けてしまえば阻害される。
 たとえフェンカードの加護を受けていようと四人がかりで撃ち込んでしまえば、貧弱なウィザードが耐えられるものか。
 そんな判断なのだろう。

 甘い。

 数に任せて撃ち込まれる光弾は、一発たりともサララの詠唱を阻害しなければ、傷つけてもいない。何故。
 その問いの答えは、

『-Devotion-』

 彼女とガルデンを繋ぐ青く淡い一条の光、クルセーダーのスキル、デボージョンだ。
 指定した仲間の身代わりになりダメージを肩代わりする、通称で献身と呼ばれるスキルで、最もガルデンらしいスキルでもある。
 タフだけがとりえと揶揄されるガルデンだけに、ホーリーライト程度なら何発も耐えられる。

「ふ、私とマスターは運命の青い糸で結ばれているのだ。それでは行かせてもらうっ!!」

『-Stormgust-』

 それは極寒の疾嵐。
 机上の存在たる絶対零度さえもが、吹雪の姿を借りて舞踊る狂乱曲。
 多段式に襲う冷気の刃と氷塊の拳に、異端審問官たちはなすすべも無く捕食されていく。
 一人の異端審問官など、掲げたバックラーにしがみ付くように防御するものの、真横から等身大の氷塊が直撃。
 勢いを殺すことも出来ず壁に打ち付けられ気絶する。
 もちろんその後も、凍温により壁に張り付けにされた彼に、容赦なく氷のつぶてが何度も撃ち込まれた。
 吹雪が過ぎた後には、すべが凍てついていた。

「サララさんまさかと思うけど、殺してないよね。ここはGv空間でもPv空間でもないから、下手すると死人が出るよ」
「大丈夫だ案ずるな。数ヶ月は凍傷で難儀するだろうが、死んだりはしてないはずだ」
「なら良かった。……あと途中で言ってた”運命の青い糸”って台詞だけど、あれ――――」

 ガルデンの指摘を受けて、今更にサララは失言に気づく。
 ……普段なら赤面して言うことの出来ない台詞さえ、戦闘時の高揚で叫んでしまった。
 またも、自分でも判るくらい頬が熱くなる。
 それを指摘するということは、ガルデンもまたサララの事を意識しているという事か……

「―――あれって糸と言うより、天津の鵜飼の紐に見えるんだけど、
 糸じゃなくて紐とかリードに見えないかな?」
「だぁぁぁ朴念仁っ!! マスターあなたという人は、私の事を便利な家畜か何かと見ているのか。
 あーそうか、どうせ飼うのなら便利な家畜より可愛いペットのムナック方が良い訳だな」
「何もそういう意味じゃないよ。ただ糸なんかよりも、しっかりと繋がっていたいって、ほら紐の方がしっかりしてるでしょ」
「ふん、もう知るものか」

 何か言い訳を言っているガルデンをサララは完全に無視する。
 やつ当たりに、サンダーストームでも氷漬けのプリーストたちに撃ち込んでやろうかと詠唱を始めた。
 密度の低い演算詠唱と、小規模な光の魔方陣。
 そして転がるのは、三人の異端審問官。氷に濡れた彼らの通電性は大幅に……………、三人?
 初め路地から響いた足音と台詞は四人分だった。
 ということは……ハイディングか!!
 サララが詠唱をキャンセルするよりも速く、何も無かった空間から一人の男プリーストが出現。
 こちらに構えを取らせる間を与えず迫り来る。
 速い。明らかに速度増加が付加されている。

 激痛。

 殴られたと知覚するよりも先に痛覚が絶叫。
 詠唱のキャンセルすら出来ていなかったサララのがら空きの腹部に、豪拳がめり込んでいた
 強制的にキャンセルさせられた詠唱。
 横隔膜をやられて呼吸困難のサララは、ざらついた路面にへたり込みながらそれに気が付く。
 ガルデンのデボーションの効果が切れていたことに。……ここまで読んでいたのか。
 犬のように口をあけて唾液をたらし、酸素を求めるサララ。
 彼女は、自分を一撃で沈めた異端審問官を見上げながら戦慄する。
 プリーストの法衣の下には鍛え上げられた肉体。背には凶悪なロングメイスを背負い、アラーム仮面で素顔を隠している。
 仮面の下の表情は窺い知れないが、足元のサララも、背後で倒れている仲間さえも眼中にない。
 ただガルデンを見据えながら、腰から抜いた、見るからに対人特化の加護と過剰精錬が施されたメイスを、ゆっくりと構えた。






「何故だ」

 無機質な仮面の越しに、冷たく篭った声が発せられる。

「何故、打ち合わせ通りに素直にやられ役に徹しない。そちらには騎士団を通して話が言っている筈だぞ。何を無駄な事をしている。とっとと済ませろ」
「貴方が潜入捜査官ですね。なら、この場で依頼内容の変更をお願いします。このコを――――」
「殺さないで欲しい、そんなところだろ。下らん情など移しおって、それとも自己満足か。
 ただの魔物でしかも騎士団から支給された、言わば備品のようなものだろ」

 ガルデンの言葉を断ち、冷たく放たれた禍々しいまでの正論。
 感情移入と自己満足、魔物と備品。
 たったそれだけのキーワードを並べただけで、ガルデンの決意も、サララの抱いた愛おしい気持ちも、全て高みから否定できる。

「さぁ退け。準備よく転がっているその魔物をツブせば、それで終わり。後ろで転がっているバカ共も、同じく終わりになるのだ。
 本来裁く側の人間が犯した罪、こうしなければ罰せられぬ」

 大きく一歩、プリーストが前へでる。と同時に威圧。
 実力者のみが放てる存在感が、ガルデンを呑み込みにかかる。

「説明してやる。バカ共の罪はペットイーター、器物破損などではない。教団上層部への叛乱だ」

 彼が語りだした内容は以下の通りだ。
 巷で言われている王室と教団の対立の構図だが、教団上層部は王室との対立を望んではいない。
 もちろん教団は福祉を優先する事に変わりは無いが、対立や争い事は避けたいのが本音なのだ。
 けれど王室との対立を望む者も中にはいる。若手実力者や原理主義者たちは、王室との対立構造と弱腰の上層部への批判を利用して勢力を拡大。
 異端審問官の一部までをも抱え込んだ。
 そして今回、上層部へのあてつけ、王室との対立扇動、原理主義実演などの意味を込めて、”ペットイーター” を行ってきた。
 教団上層部は逆にこれを利用し、実働部隊であるペットイーターの逮捕を足がかりに、急進勢力に反撃に転じた。
 そのために、怪談まがいの噂を広め、潜入捜査官を送り込み、今まで闇から闇に葬ってきた“ペットイーター“ を露呈させようとしている

「バカ共は、神聖なるプロンテラから邪悪な魔物を払拭する、などと謳っていたが、何処まで本気かは解らんな。この三人は実働部隊に過ぎず、根はもっと深いという事だ」

 語り終えたプリーストは、また一歩前へ出る。だが、今度はガルデンも一歩前へ出た。

「そこまでして教団の権威を守りたいのですか」
「権威? そんなもの仔デザにでも喰わせてしまえばいい。教団に必要なのは、権威でもなければ、
 死にたがり狂信者でも革命気取りの原理主義でも、ましてや脱税に忙しいネオコンでもない」

 ここまで説明されれば、サララには理解できた。確かに教団上層部は権威などほっしていない。
 権威を失ってもいいから、組織に芽吹く反抗勢力を根絶やしにする気なのだと。
 反抗の芽を上から押しつぶすのではない。恥を覚悟で外部の力を使って摘出する。
 下手に上から圧力を加えてしまったら、明確な分裂を招きかねない。
 10年20年の長い目でみれば、恥を対価に外部の力を利用するしかない。
 それも、対立色の強い王室ではなく、騎士団という中立の勢力を指定してだ。

「教団に必要なのはシステムとしての組織力だ。分裂も内部対立もいらないのだ。ただ当たり前の救済と活動が出来る組織作りなんだ」

 村々の教会を束ね、地方の情報を把握している教団。
 対して王室は人口はおろか、何処にどんな村があるかも把握していない。
 事実、王室発行の国内地図の大半は、プロンテラ、イズルード、モロク、ゲフェン、フェイヨン、アルベルタ、アルデバラン程度しか描かれていない。
 そんな地図に載っていない村々で、モンスターの大量発生による田畑の荒廃と飢饉が生じたとして、王室に何が出来るという。

「俺の生まれた村もそうだった。フェイヨン近く小さな村さ。子供のほとんどが飢えて死ぬか、人買いに売られていく。
 それも現金じゃない。子供と同じ重さの種籾と交換されるんだよ。助けに来てくれたのはプロンテラ教団だけだ」

 教団の行った食糧支援とモンスターの駆除。それにより何人も命が救われたことか。

「それでも俺の家族は皆死んだよ。俺は意外と高く売れたし、奉公先のアルベルタの商家から賃金を送金できた
 ……それでも流行り病で皆死んじまった。話じゃ、最後に死んだ14歳だった妹は、他の家族の墓を一人で掘りながら、
 誰に見取られること無く、何も言い残すことも出来ずに死んでいたそうだ」

 だから彼は教団に入り、教団のために精進し、亡き家族のために戦い、法王の側で密命を遂行してきた。
 今回も、教団内部に芽吹いた反抗と分裂の兆しを摘み取る。
 二度と、自分と自分の家族と同じ目に会う者が出ないためにも。
 無機質な仮面の下に、人間らしい怒りと決意を燈す潜入捜査官。それと対峙するガルデンもまた、決意を燈してまた一歩踏み出す。

「僕はバカですけど、貴方が言っている事はわかりました。でもやっぱりバカだから、貴方の言っている事が正しく聞こえても、
 それがこのコを見殺しにしてもいい理由にはならないと思うんです。だから―――」

 ガルデンは、路面の砂礫を噛み鳴らす摺足で大きく左足を引いて、腰を落とす。両の手を帯刀したままの片刃の曲刀、――正宗―― にかけ、右足に重心を持っていく。自然とそれは居合いの構えとなっていた。
 これ以上に無い、戦う意思表示だ。

「このコを守ります」
「無駄なことを。………」





 居合いを構えるクルセーダーに対して、プリーストは右手のメイスを、いくぶん腰を落とした片手正眼に構えた。
 それでも、正面よりも向かってやや右方を強く警戒する。視線の先には正宗がある。
 あきらかにガルデンの構えは、天津の剣術、居合だ。それを念頭に置無ければならない。
 神速の抜刀とそれに続く理詰め太刀筋、それが居合い。
 なかでも鞘走りの速度で加速する抜刀は、居合いの代名詞であり、最速の弧を描き敵を断ち切る。
 放たれた後に反応するのはほぼ不可能。
 放たれる前から太刀筋を予測し、先に動いていなければならない。
 ここでガルデンの構えから読み取る要因は、彼我の間合いと体格差、正宗の長さと肩や爪先の向きと沈み具合。
 数えだしたらきりが無い。
 だからこそプリーストは一気に間合いを詰めにかかった。
 古式パンクラチオンのタックルを思わす、路面すれすれに低く落とした姿勢で跳び込む。
 速い。
 それは、先の先にて低空接近すれば、そのぶん抜刀の予測範囲は狭まるという判断。
 刹那の遅れを帯びつつもガルデンも動く。
 『-速度増加-』のかかっている分、プリーストの方が速い。確実に居合いの間合いを崩して接近に成功。
 が、それがガルデンの狙いだった。
 刺突。それも刃ではなく柄頭を使っての刺突。
 正宗を鞘から抜くことなく、予備動作も無しに相手の顔面めがけ柄を突き出した。
 自分の踏み込みばかりか相手との相対速度の乗った、爆発的な直線運動。
 それはプリーストが予測したどんな最速の弧よりも速い。
 直撃。
 仮面の上からとは言え、顔面にくらったプリーストは仰け反り踏み込みが止まった。
 その瞬間にもガルデンの居合いは次撃へ転じる。刺突の反動を使って鞘を後ろに弾き、刃を解放。
 右手は回さず、腰と足裁きで身体ごと右に振り切る。
 そうすれば勢いは無いものの、最短の動きを持って相手の首に刃がかかる。
 人間、首に刃がかかれば、本能的に後ろに飛び退く。
 その合力を使えば、力をかける事なく相手の鎖骨を断ち切れる。
 もらった。そうガルデンが確信した瞬間、仮面プリーストが本能を無視。
 更なる踏み込みを再開した。
 密着。
 鈍器も刃も振るえぬ予想外の間合い。
 この間合いにおいてプリーストは、空いている左手でガルデンの腰を鷲掴み。
 と、同時に足払いが軸足を刈りとった。

「っ――――――― !?」

 プリーストは踏み込みの勢いだけでなく、ガルデンが身体ごと刃を振り切ろうとして生じた力を利用して、
 左手一本で押し投げる。
 いとも簡単に重心を失ったガルデンは、螺旋のベクトルと浮遊感に宙を舞う。
 咄嗟に受身を取ろうと身体は動いたが、あえてそれを留める。
 今、正宗から手放し受身を取ってしまっては、プリーストに勝つ事はできない。あのムナックを守ることは叶わない。

「がぁぁぁっ!!」

 だから愛刀から両手を離さず、刀身を守るように、無理やりに左の肩口から落下。
 石畳を相手にタックルをした左肩からは、子供が聞いたらトラウマになりかねない軟骨が潰れる水っぽい音が響いた。
 それでもガルデンは正宗を手放さない。腰と背筋の反動を使い、すかさず立ち上が――― れなかった。

「放物線でも描いて来い」

 フルスイングのロングメイスがガルデンを襲う。
 なんと潜入捜査官は、先ほどガルデンを左手一本投げると同時に、もう一方の手のメイスを投げ捨て、
 背負っていたロングメイスに持ち替えていた。直ぐに両手で握りなおし、投擲の勢い殺さず、そのまま右回りに加速。
 更なる一回転で破壊と遠心力の詰まった一撃で、
 左利きのゴルフ、もしくはパンヤと呼ばれる球技の様なスイングで、ガルデンを打ち放つ。
 飛んだ。
 人間の体が数メートルも吹っ飛ばされるというバカみたいな現象も、自身が体験してみればよく解る。
 本当にバカみたいな状況だ。
 自分自身が飛んでいるのに、現実感が一切無い。
 そんなバカな放物線運動も、石畳を穿ち破片を撒き散らすほどの墜落をもって現実へと戻る。

「がっは――っ!!」

 肺をやられた。
 墜落の衝撃で呼吸ができない、なんて生易しいもんじゃない。
 空気を吸った途端、ロングメイスを受けた右下胸部を、内部からの激痛が不意打ち。
 慌てて空気を吐き出しても痛みは走るし、吐いているガルデン自身がわかるほど、生臭い鉄錆の臭いが満ちている。
 ロングメイスの衝撃で肺胞が潰れたか。
 肺全体の何パーセントが潰れたか知らないが、内部で出血しているのは間違いない。
 それでも肺胞の損傷具合で言えば、タバコを吸う生活を何年も続けるよりはよっぽど軽微だ。
 そう、ガルデンは自分のダメージを判断し、今回も手放さなかった正宗を握りなおす。


 だが、傍から見ているサララは、もっとダメージを受けている場所が他にあることに、気付いてしまった。
 頭だ。
 どうやら頭部へのダメージは、致命的ともいえるほど相当のものらしい。
 財政状況を無理して手に入れた過剰精錬のヘルムも、全然役に立っていない。脳の最深部がやられている。


 初手の鞘での刺突のアドバンテージなどさして無いのに・・・、
 いかんともし難い実力差が見えているのに・・・、
 受身を取らなかった左肩が悲鳴を上げているのに・・・、
 肺から出血する程の攻撃を喰らったと言うのに・・・、

 ・・・ガルデンは立ち上がろうとする。

 こんな不利な状況だと言うのに、守る義務もなく、簡単な正論で一蹴されてしまうモノの為に、このクルセーダーは立ち上がった。
 正宗を杖のように突き、向けることの出来ない切っ先の変わりに、まだ衰えぬ眼光をプリーストに向け、ゆっくりと立ち上がった。

「……なんで、……な、…無理だマスター、なんで立ち上がるのだ。もう良いではないか」

 絶対に頭がどうかしている。






 現世への未練に縛られた幽鬼か、死にぞこないの敗残兵か。どちらにしても、ガルデンの立ち上がる姿は、余りにも虚ろで危うい。
 そのくせ、底知れぬ圧力を秘めた視線は、こちらが一度見入ってしまったが最後、そらすことが出来ない。
 流石にプリーストも感嘆の声を漏らす。

「ほう、流石は聖騎士殿だ、たった一撃では沈まぬか」
「一撃って、最初の投げはカウントなしですか。…教会のかたはきついですね」
「受身を取らなかったのは、貴様の勝手だろうに。更に言えば、とっとと降参すればよいものを、
 無駄に立ち上がっているのも貴様の勝手だぞ。解らんのか、自己満足に過ぎない足掻きだというのが」

 そう言ってプリーストはロングメイスの持ち方を変えた。
 長いグリップの中ほどを左手で掴み、そのやや後ろを右で支える。半身に構えた身体に、それを巻きつける様に持つ。
 絶えずフットワークはリズムを刻み、上下前後左右に体を揺らす。その残像を纏う揺らぎの中に、次の動きの前触れをすべて隠してしまっている。
 この構えは鈍器よりも、フェイヨン地方の棍術や棒術のそれに近い。

「貴方の言う通り、僕は満足いく事をしたい。それが僕にとっての自己満足なのかも知れません。
 でもあのコにとって、僕はご主人様なんです。だから、立ち上がるんですよ」

 一方のガルデンも、自分の一言一句を無理槍気味に力に変えて、正宗を高く持ち上げる。
 どんなに気張ったところでダメージの出ている左肩を庇う様に、構えは右の上八相。
 肩幅に開いた脚で深く、左前の半身となる。爪先で地面を掴むような、微かな擦り足のみで間合いをつめ、上体は微動だにしない。
 その構えは間合いを支配し、後の先にて喰らい付く構えだ。
 プリーストが動ならば、こちらは静といったところか。
 動と静の衝突は、再び動のほうから攻め込んできた。

 低い。

 やはりプリーストは沈み込むような低空進入。
 『速度増加』で加速した踏み込みは、路面をなめるように迫り来る。
 右方に抱えたロングメイスは、更に下方から路面を抉るように――――――否、完全に路面を抉り、穿ち、破片を撒き散らしながら振り上げられた。
 それは豪腕に任せ振られる、上限の月のような軌跡。
 路面を障害とも思わず轟旋を描く上限の月は、砕いた石畳の破片を流星群とし先行させる。
 流星と化した石つぶては、ガルデン目掛けて高速で飛来。
 幾片もの尖鋭な破片が顔面に向かっているというのに、ガルデンはそれも含めて全の流星と、それらに反応しようとする自己の反射を無視。
 流星群の奥から唸りを上げて昇ってくる、破壊の概念で満ちた下弦の月だけに集中。迎撃を開始する。

「――ぁぁあっ!!」

 額や頬に石くれを浴びながらも裂帛の咆哮。切断の意思で染め上げた下弦の月を振りおろす。
 流星群を突き抜け、下弦と上弦の月が激突。
 赤青の混じった眩い火花が、宵闇に一瞬の煌めきを描き、かん高い金属の悲鳴が響く。
 続いて、ぎゃり、と刃と鉄が噛合う不快な音が滲むように互いのエモノから伝わり、力での押し合いが開始される。
 ようやく戦闘開始から、初めて互いのエモノがぶつかった事になる。
 ここまで来るまでに、ガルデンはそれなりにダメージを喰らっている。左肩と肺に大ダメージの他、先程の石くれに額と頬を裂かれ血が伝い始めている。
 更に今頃になって気付けば、右の肋骨も何本かイッている様だ。肋骨よりも内側の肺がやられているのだ、当然といえば当然。

(下手をすれば、折れた肋骨が肺に刺さっているケースもありえますね。・・・それに比べて・・・)

 一方のプリーストはほぼ無傷。初撃の打突も仮面越し故に効いていないのだろうか。
 今、腰の高さで競り合っているロングメイスも、ガルデンの正宗が着切っ先に全力を込めて押し返そうとしているのに、一歩も退こうとしない。
 相手の食い縛った口からこぼれる呼気の音が解り、黒地に赤の法衣の隙間から、屈強な胸板とそこに浮かぶ汗の滴が視認できる程の距離で対峙すれば、その力量はまざまざと痛感させられる。
 やはり・・・、繰り返してしまうのか・・・
 ガルデンの奥深くから、後悔の塊が浮かび上がってくる。かつての彼を今の彼へと導いた出来事。
 誰にも触れさせない心の底辺に深く沈みこみながら、絶えずガルデンを翻弄する後悔の塊。まるでルルイエと呼ばれる廃獄都市のようだ。それが浮かびあがろうとしいてる。
 その塊ごとねじ伏せようとするかの如く、ロングメイスを押し返す。
すると相手は、新たな攻撃を仕掛けてきた。

「どうした、今更怖気づいたか」
「いいえ・・・・・・、今更じゃないですよ、最初から、この依頼を破ろうとした時から怖気づいてますよ。それでも僕は、選ぶしかなかった」
「・・・・・・ウソだな」
「―――!?っ」

 これ以上無く簡単な否定。・・・何故ウソだというのか。一瞬、ガルデンは目の前の聖職者を問いただし、ウソでは無いことを、選ぶしかなかった理由を証明させようと―――思ってしまった。
 惑わされるな。
 プリーストの放つのは会話でも議論でもない、ただの音声だ。武装した言霊であり、敵の動揺を誘い出す、単なる駆け引きの常套句に過ぎない。
 何でも良い、相手に話しを吹っかけ、相手が返答したら「・・・・・・ウソだな」 とたった4文字で否定すれば良い。最も簡単な詐術だ。

 なのにガルデンは一瞬の隙を与えてしまった。その一瞬の内に、たった4文字の言葉は侵食を開始する。

 本当に、選ぶしかなかったのか。別の選択肢はなかったのか。あったのに、僕の自己満足が、ソレを否定したり見向きもしなかったんじゃないのか・・・・・・
 それが原因で、僕はまた同じ事を・・・・・・。いやあの時よりも無様で・・・・・・間違っているのか・・・
 目の前のプリーストが求める、組織の正義とか、国家とか大局とか、そういうもののほうが正しいのか・・・

 たとえ拮抗する物理的な力は維持できようとも、精神は自身のこぼす不安という流血に溺れ、後悔という溺死を招く。やがてそれは、物理的な力へも―――影響は出なかった。

「マスター、右だ・・・、・・・奴の、右首・・・を」

 あることに気付いたサララが、搾り出すように一言だけを発した。
ある意味それは奇跡かもしれない。
 石畳に這い蹲り、呼吸もまともに出来なければ、口に入った砂を吐き出すこともできず、意識をなんとか繋ぎ止めているだけのサララが、それに気付けたことは奇跡かも知れない。
 プリーストの右首には、赤い筋が零れ、そこよりやや下の肩口には、一線の赤い傷が刻まれている。
 初撃の柄頭を使った刺突と続く抜刀。その時にガルデンが付けた傷だ。
 たとえどんなに小さくとも、敵に刻み付けることが出来た戦績なのだ。
 現金なもので、たったコレだけのことでガルデンの心は動き出す。後悔や嫌悪といった後ろではなく、ただ前へ向かって動き出す。
 考えてみれば、子供の時からこういう生き方をしてきた。
 バカ正直な選択しか選べなくて、選んだ後でうじうじ悩んで、誰かに助けられて、それで漸く達成する。それでもまたバカ正直な選択を選んでしまう。
 無論バカ正直な選択を達成できず、失敗に終ったことだってある。失敗のほうが多いかもしれない。それでも、途中で諦めてしまった時よりはマシだったと思う。
 そして振り返れば、いつの頃からか『誰かに助けられて』の誰かに当てはまる人物に、サララの比率が高くなっていた気がする。
 かつてはチセという義姉の比率が高かったし、今でも低い訳ではない。それでも何故だか解らないが、サララの前だけでは失敗したくない、と今は強く思う。
 それは、今回もサララの一言に救われたから、というだけではない気がする。
 ―――――わからない。
 でもかまわない。完全な答えなんてまだ持ち合わせていないけど、今心の中で奮えている思いの数々は、それなりに上等なものだと信じるから。信じられるから。
 だから前へすすむ。





 決意は一瞬。
 拮抗する力を一気に反転。相手の押し返していた力を利用して、正宗切っ先を弾く様に上昇させる。防御されるのを覚悟で、狙うは相手の喉元だ。
 当然プリーストも対応。ロングメイスの中程を掴んでいた左手を、下に落としながら引き寄せ、同時に支点として転回。
 右手で支えたグリップの端――柄尻が、身体に密着するような間合いを駆け上がり、喉元ぎりぎりの所で、正宗を横薙ぎに払いのける。
 相手の防御を覚悟していたガルデンは、払われた刀身と手首を柳のように右へ流し、次撃を即座に放とうとする。
 そのガルデンの視界の下端で、想定外のものが動いた。
 蹴りだ。
 プリーストは裾の長い法衣をはためかし、右脚で高速の蹴りを繰り出してきた。斧脚の軌道は、刹那の間合いで弧を描き、ガルデンの側頭部を狙ったものだ。
 ありえない。想定外どころか規格外。
鈍器を振りぬいた後、上体が泳いだまま上段蹴りを放つなど、いかに下半身を鍛えたところで不可能だ。たとえ蹴りを放った所で、片足で重心が保てるはずが無い。
 放てる蹴りなど勢いのノッていないものか、膝にも届かない下段の直蹴りしかありえない。
 なのに目の前に迫る蹴撃は、腰の螺旋運動がしっかりと爪先まで押し込まれた一撃。ガルデンの頭部を確実に射程範囲に捕らえている。
 直撃すれば意識を奪い、下手をすれば首の骨を折られ、命までも奪いかねない。
 何故こんな蹴が放てるのか―――

「ロングメイスを支柱に!?」
「気付いても遅い」

 片足では上体が泳いでしまうなら、何かにつかまり安定させれば良いだけだ。
 プリーストは、先程下に落としながら引き寄せたロングメイスの鉄球側を、落とす勢いそのままに路面に突き立て、半ば固定。
 両の手でそれに掴まることで、左足一本で立つ上体を安定させていた。
 喉元の防御と同時に、鈍器を支柱として使い、無茶な間合いと軌道の蹴りを可能にさせる。
 もはや鈍器の使用方法を逸脱していた。棍術、棒術ばかりか、無手格闘を織り交ぜた格闘スタイルだ。
 ここまでロングメイスを使いこなすプリーストなど、信じられるものか。ハイプリーストどころか、チャンピオンの間違いではないのか?
 迫り来る斧脚の一撃。
 正宗を柳の様に流したところで、所詮はロングメイスよりも先に刃を一閃させる事を狙ったに過ぎない。
 こんなイレギュラーな攻撃に、両手剣である正宗での迎撃は不可能。
 まして、盾をもたないガルデンに防御は出来ない。
 Vitクルセーダーの癖に、酔狂にも両手剣を使っていた事が、今更あだとなる。
 ならば回避と言いたいが、それこそAgiを削りVitを鍛えた者が回避など出来るものか。仮に後方に逃げたところで、
 軸足と腰のひねりで、蹴りの射程は半歩の間合いを伸ばすことが出来る。
 武器での迎撃も、盾での防御も、後方への回避も不可能。
 ・・・・・・ならば、前へ出て武器以外での迎撃っ!!
 頭突き。
 ガルデンは思考や理論よりも先に、経験と本能の命じるまま四半歩前へ踏み込み、ヘルムで固めた頭で頭突きを放っていた。
 狙うは蹴りを放つプリーストの右足、脛よりやや上、ブーツも鎧も無い膝下の無防備な場所だ。
 激突。ガルデンの首はもちろん、食い縛った奥歯が歯茎ごと軋みをあげる。

「っ――――!!」
「ぐぁぅ、なっ!?」

 プリーストは激痛よりも、ガルデンの獣じみた行動に衝撃を受けて、微かな隙をさらしてしまった。
 そこをガルデンが反撃に転じる。
 柳の様に流していた正宗を、振りかぶることなく、頭突きの体制から倒れこむように一閃。斜めに刃線を引き結ぶ。
 捉えた。
 蹴りの体制から戻しきれなかったプリーストの右太腿を、正宗の切っ先が斜めに切り裂いた。深さは1センチ程度だが、腿の半分に線傷を刻み込んでいる。
 やっと打ち込んだ、最初の一太刀だ。

「チィッ、手を煩わす」

 左足で飛び退き、冷静に間合いを確保しようとするプリースト。
 慌てることなど無い。そもそも支援に特化したわけではない彼にとって、こんな程度は致命傷などではない。
 二人は互いに間合いを広げ、中距離での武器同士の打ち合いに持ち込もうとする。

「なんとか、お相子ですかね。それともまだ、一矢報いたってやつでしょうか」
「ぬかせっ!! 。一矢も二矢もあるものか、何故こうまでに邪魔をする。貴様とて、この国がどうなってもかまわぬ訳ではなかろう」
「なら、あのムナックを救って、この国も救えばいいで筈です。一度死んだあの娘は、アンデッドとはいえ黄泉帰れたんです。
 このままじゃ、あの娘は殺されるために黄泉帰ったようなもんじゃないですか。そんなのあんまりだ。僕にだって、二度と繰り返したくないことがあるんです」

 ロングメイスを棍術の様に扱い、多段式の撃ち込みで翻弄してくるプリースト。
 激痛のはしる右脚の刀傷を気にするそぶりを見せつつも、そのフットワークを緩めることはなかった。
 斜めに切り裂かれた傷口からは、無理な収縮運動を繰り返された筋繊維が、皮膚から捲り上がるようにはみ出している。
 致命傷でなくとも、『―ヒール―』やポーションで回復したい状態だ。
 その回復をガルデンが許さない。懸命に正宗を打ち込み、追加ダメージを与えられなくとも、プリーストの行動を攻防に専念させる。
 当然、吹き出る鮮血は、もともと黒い法衣を更に赤黒く汚すだけではすまない。
 ブーツの中まで浸み込み、右足がステップを刻むたびに、生温かく粘質な水音を滴らせる。
 もっともガルデンも手一杯な状態。
 正宗を打ち込んで相手の回復を阻害できても、打ち返されるカウンターを捌ききることが出来ていない。
 危険度の高い攻撃を優先して迎撃するものの、肩に脇腹に、時には顔面に、小規模な打撃がいくつも撃ち込まれていた。
 それでもガルデンは、自分の血と汗で湿った正宗を握り締め、とある瞬間が訪れるのをじっと待つ。

「何て耐久度だ。貴様本当に人間か、BOTではあるまいな。いいかげん墜ちろ」
「僕はれっきとした人間ですよ。それにウチのギルドはBOT禁止なんです、BOT扱いされたら心外ですね」

 BOTとは、禁忌の魔導の産物。初源魔法を使うとも、魔物の糞を用いるとも噂される、忌み嫌われる存在。
 俗称に自動人形と呼ばれるが、グラストヘイムで稼動する給仕型自動人形のアリスなどとは、まったくの別物である。
 世界の持つ情報処理能力に不可をかける事を省みず、外部からの電気刺激によってあらゆる活動を活性化させた、言わば改造人間。
 ヒトデ並みの再生能力を有し、BOTを止めるには殺すしかないとされている。
 確かにガルデンの耐久度は、BOTを連想する程のタフネス具合だが、

「僕には貴方のほうが、よっぽど人間以外のバケモノに思えますよ。いったい貴方は、プリーストなのですか、モンクなのですかっ?」
「この身は教会で洗礼を受けたときより、異端審問官だ。それ以上でもそれ以下でもない。冒険者ぶぜいの基準ではかられるなど、極めて遺憾だ」
「でも貴方がバケモノなのは変わりませんよ。あんな無手と鈍器の使い方・・・、タックルだって明らかに組手格闘(グラップラー)臭いですし」
「教団をひそむ本物のバケモノが見たかったら、イノケンティウスと言う枢機卿にでも会いに行け。もしくは歓楽街に行って、「聖母」を名乗るヤツにケンカを売ってこい。
 他にも、等身大の十字架担いだ黒服やら、教団とゲフェンの魔術師教会の両方に所属している聖杯の管理人までいるぞっ!!」

 刀と棍、言葉と言葉の応酬。
 互いに一歩も退かず繰り広げられたそれも、終焉の時が訪れる。ガルデンが耐え忍び、待ちに待っていた瞬間がやってきたのだ。
 何の前触れもなく、プリーストの振るうロングメイスが失速。鉄球による、突きから横薙ぎへ変化する一撃が、突如として速度を失った。
 ガルデンが狙っていた瞬間。『―速度増加―』の加護が切れた瞬間だ。
 ―――――もらった!!
 ガルデンが構えを組み替えた。一切の防御を切り捨て、全身の痛覚を無視。
 正宗を峰打ちに持ち替え、大上段に振りかぶる。二度と訪れない刹那のほころびに目掛け、踏み込み足を完全に踏み切って全身で間合に飛び込んだ。

「罠だーーーっ!!」

 サララの叫びが響いても、既に遅い。
 勝利を確信したはずのガルデンの首筋に、粟立つような恐怖が走る。
 かつて敗北のたびに味わった、首筋をなで上げる恐怖の触指。
 ――――嗤っている。
 仮面の奥で嗤っている。仮面に遮られ見える訳無いのに、異端審問官が嗤っているのが判る。
 飛び込んでくるガルデンを、嘲嗤っているのが判る。
 次いでありえないことが目の前で起こる。
 飛び込んだガルデンの軌道が頂点に達するよりも前に、失速した筈のロングメイスが再び振速を取り戻したのだ。
 『速度増加』の加護を失い、鈍重な薙ぎをしていたはずなのに、飛び込んだガルデンに呼応し、真下からの撥ね上げに瞬時に転じて見せた。
 何故? 時間切れとなった『―速度増加―』を、掛けなおす隙など無かったのに、どうしてロングメイスが加速するというのだ。
 全ての防御を切り捨てたガルデンに、真下から迫る破壊力の塊を避けられるはずも無く・・・・・・・・・

 直撃。

 自信の飛び込みの勢いと、相手の撥ね上げる打撃。その相対速度とぶつかり合う質量をまともにくらい、ガルデンの意識は石畳に落下するよりも先に暗幕を降ろす。

 ――――何故?

 ただ一言を、虚空に呟きながら。














どもライ麦狼です。ここでやりたかったのは、戦闘シーンただそれだけです。
文学性がないとか、ストーリーに必要のないシーンがあるとか、そーいうのはどうでもいいんです。B級アクション映画のノリで描きたかったのです・・・・・・良い子のみんなは真似しないでね。・・・色々な意味で
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