ライ麦狼の寝床

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小説 『刃の記憶』  

DATE: 2006. 06. 24 CATEGORY: 小説

 ぞぶり、と錆びた刃が皮膚を食い破る。
 腹の中へ入り込んでくるざらついた鋼の塊。痛みよりも先に異物感が襲ってきた。
 黄色い皮下脂肪を貫通し、刃が腹膜を突き抜けた瞬間、ボイルしたソーセージを突き刺す様な音がはじけた。
 桃色の大腸はその弾力で鋼塊を避けるが、茶褐色の肝臓は避ける事など出来ず、組織の一部を突き崩される。

 痛覚が悲鳴を上げた。
 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。イタイ。痛い。痛い。痛い。イタイ。痛い。痛い。痛い。イタイ。イタイ。イタイ。イタイ。イタイ。イタイ。痛い。イタイ。痛い。イタイ。イタイ。■■イ。イタイ。痛い。イタイ。イタイ。イタイ。イタタイ。イタイ。タイ。■■■。イタイ。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――――――――――。

 まるで破瓜の様だと感じていた意識を、痛みと哀しみが真赤に塗りつぶす。少女は叫ぶことも出来ない。ただ自分の腹から突き出たナイフの柄を見下ろし、信じられないという顔をするだけだった。

「・・・・・・どうして」
「”どうして” だって。それは簡単さ、僕は君に復讐するために近づいたからさ」

 目の前の少年は、初めて人を刺した事に興奮したのか、速い口調で勝手に語り出す。

「あの船の事故で、僕の妹と君は一つの救命具を取り合った。親友同士だったのに。あいつの遺品のビデオのメモリーパックに残ってたんだよ。最近の防水機能はすごいね」

 彼女はあの事故で失った親友を思い浮かべる。いつもデジタルビデオを持ち歩く、カメラマン志望の、大切な友達だった。本当に大切な友達だった。

「君は間違ってなんかいないよ。死に直面して仕方の無い事だし、僕だってそうするかもしれない。正当防衛みたいに法律でも明記されている。・・・けど死んでくれよ」
「違うの。・・・・・・何故だかわからないの」
「だから復讐なんだって。正しいも正しくないも関係ない。妹が死んで狂った兄貴の狂った復讐さ」
「それは解ってる。ううん、解ってた。貴方が復讐の為に近付いたって、初めから解っていた」

 少女は無機質なナイフ柄から、興奮の冷め始めている少年の顔へ視線を移す。その視線に、少年を責める気配は一切無く、むしろ彼を温かく見つめている。

「貴方が復讐できて、それで償えるなら嬉しいって思ってた」

 少年の顔が驚きで凍りつく。

「貴方に殺されたいって思ってた。なのに今は死にたくないって思ってる。貴方と離れたくないって思ってる。どうして、ねぇどうして」

 少女は涙を流す、哀しみからの涙を。

「もう大好きな人と離れるのは嫌。・・・もう二度と、離れたく・・・」

 だんだんと視界が霞んでくる。もう一度だけでも良いから、愛してしまった少年の顔を見ようと目を凝らす。すると自然に、彼の体温の篭ったナイフの柄を両手で抱きかかえていた。
 見えた。色彩を失い、視界の半分以上が黒く霞んでいるなか、彼の顔だけがしっかりと見えた。
 少年の顔からは、復讐の達成も、刃で肉を切り裂くことの興奮もなくなっていた。
 先程、少女が浮かべたのと同じ、信じられないという表情だけだ。ああ、念願の復讐が出来たのに、彼にこんな顔をさせてしまっている。

「ごめんなさい」

 その一言を言い終えると、彼女の意識は暗幕を降ろした。
 それが2年前の虫の鳴く夜の出来事だ。








 という訳で、昔書いた小説をちと手直ししてアップしました。
 ちなみに、とある修行場にコレを出したことがあるのですが、評価として、『痛い』の表現がありきたりだと指摘されたことがあります。
 なんでも、『痛い』で画面を埋め尽くす表現は誰でもやるもので、取り立てて新しいものではないそうです。
 確かにみんなが使っている手法だねぇ~・・・ってことで、カタカナ混ぜたりで塗りつぶしたりと、小手先アレンジ加えてみました。
 感覚としては、『味噌汁にネギを入れる時、ネギ焦げ目が付くくらいあぶってから使う』 みたいな感じです。
 ぜひ皆さんも一度やってみてください・・・・・・どっちを?
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